家から出た零次朗を物陰から見ている、一人の老人がいた。
その老人が呟いた。
「やっと見つけたわい。大きくなったのお。我が孫よ。」
零次朗の姿が見えなくなると、老人は零次朗の家のチャイムを鳴らした。
小早川零次朗は、養子であった。
東京は深川の富岡八幡宮に捨てられていたのを、お参りに来た老婆が見つけた。
すぐに警察に届けられたが、結局捨てた親は出てこないまま、施設に引き取られることになった。
それを哀れんだ発見者の老婆が養子として、引き取ることにした。
不思議なことに、生まれて間もないと思われるのが、まったく泣かない子だった。
いつもニコニコしており、まるで傍にいる誰かにあやされているようだった。
それから三年ほどして老婆が亡くなり、零次朗は老婆の娘夫婦に引き取られた。
娘夫婦にはちょうど生まれたばかりの女の子がいたが、兄妹のように差別することなく育てた。
零次朗は、物心つく頃から、その女の子を本当の妹のように可愛がった。
その子の名は彩花。
彩花はその名前のように、とても美しく、そしてやさしく育っていった。
彩花の方も、零次朗を本当の兄として慕い、一家は幸せな日々を送っていた。
その老人が呟いた。
「やっと見つけたわい。大きくなったのお。我が孫よ。」
零次朗の姿が見えなくなると、老人は零次朗の家のチャイムを鳴らした。
小早川零次朗は、養子であった。
東京は深川の富岡八幡宮に捨てられていたのを、お参りに来た老婆が見つけた。
すぐに警察に届けられたが、結局捨てた親は出てこないまま、施設に引き取られることになった。
それを哀れんだ発見者の老婆が養子として、引き取ることにした。
不思議なことに、生まれて間もないと思われるのが、まったく泣かない子だった。
いつもニコニコしており、まるで傍にいる誰かにあやされているようだった。
それから三年ほどして老婆が亡くなり、零次朗は老婆の娘夫婦に引き取られた。
娘夫婦にはちょうど生まれたばかりの女の子がいたが、兄妹のように差別することなく育てた。
零次朗は、物心つく頃から、その女の子を本当の妹のように可愛がった。
その子の名は彩花。
彩花はその名前のように、とても美しく、そしてやさしく育っていった。
彩花の方も、零次朗を本当の兄として慕い、一家は幸せな日々を送っていた。