「失礼しまーす‥。」

「はい、どうぞー。」

誰も居ないであろう用具室に挨拶をしたはずなのに、用具室の中から返ってくる声に私はまた驚いた。


私の視界に人の姿はない。



「なんだ、空耳かぁ。吃驚した。」



「おい白川、空耳って酷くねぇ?」

今度ははっきり聞こえたその声。


だけど人の姿はなく、何故か私の名字まで知っていて、私はなんだか恐怖を感じた。



そんな私の心情を察するかのよう、その声の主は

「白川こっちこっち、もうちょっと奥に進んだら右側にスペースあるんだって。」



私は少し戸惑いながら段ボールや机や椅子が散乱している中を進んでいく。


というか、誰?
私のこと見えてないのに、白川って呼んでるけど‥。