慌ただしい、朝。

そんないつもの朝に、シトシトと降る春雨。

それが頬に触れたとき、何だか無性に寂しくなった。

季節は違うが、兄貴が死んだ日もこんなふうに雨が降っていて、やがて雨は白い光に変わったのだ。

俺は家を出て、バス停に向かう。目と鼻の先だ。濡れるのを避けるため、踵は踏まずに靴を履いた。

『明日の帰り、アイスおごって』

彩夏がなんかそんなこと言ってたな…
てか、今日はとてもアイス日和ではないぞ…?

俺は雨の中、苦笑いを浮かべながらバスが来るのを待っていた。