昨晩の怒りをなんとか抑え、いつものように学校で過ごし、やがて放課後。

俺はサッカー部の練習に向かう圭と別れ、美術室に向かおうと教室を出たところだった。

「あ、真白。待って!」

彩夏が俺の背中に伸びる肩掛けのかばんの紐を引っ張り、俺は公衆の全面でコケそうになった。

「あぶねぇんだよ…」

文句を言うが、彼女はそんなことに気を留めることもなく、笑っていた。

「部活、終わったら待っててね」

廊下にいた生徒たちの視線を奪うようにわざと聞こえるようにそう告げると、彩夏は手を振って陸上部の部室に向かって行った。

「…はいはい」

彼女の背中に向かって溜息を吐いてみる。

廊下はにわかにざわめき始める。そんな空気に、俺は刺さる視線を振り払うようにしてその場から歩きだした。