黒ユリのタンゴ

そうこうしているうちに。
白ユリと一緒にしゃべっていたプリンス先輩が、不意に立ち上がる。


「それじゃ、そろそろ僕は帰ろうかな。ヤマさんも、黒ユリちゃんも根詰めすぎないようにね」

時計を見ると、もう7時前。

そうか。
プリンス先輩は今日も塾にいくのだろう。


私も同じ塾に通おうかなあ。そういえばこの間の実力テストもあんまりよくなかった。
そうだ、それを口実に今度「いい塾ないですか?」って聞いてみようかな。

われながらいい考え!


・・・などといつもの妄想にひたっていたら

「お疲れ様です、先輩」

・・・あっ!挨拶しそこねたぁ!

私が掛け損なった台詞は、くやしいかな白ユリの澄んだ声でしっかりと先輩に届いたようだ。


プリンス先輩の笑顔。ステキなはずなのに、今日の先輩の笑顔は素直に受け止められなかった。