黒ユリのタンゴ

うう。
なんと間の悪いうわさ話なの。

思わず足を止めて、盗み聞き状態の私。


しかもプリンス先輩に彼女のうわさがあるなんて。
塾とは盲点だった。

学校内ならすぐ分かるけど・・・。
あいまいとはいえ、信じたくない。


結局、肝心なところは分からずじまいだった。
彼女達の話題はその後、近づく期末テスト関連に切り替わってしまったから。


しばし、渡り廊下の前で考えてしまった。
こんなの聞いちゃったら、よけい生徒会室に行きづらくなる。
「用事もないのに・・・」と会計は言っていたようだが、まさに私もその状態。

いつもにこやかに迎えてくれたはずの会計の先輩を思い出すと、複雑だ。


今日はやめとこう。
なんかそんな気分じゃなくなった。

うわさ通りに白ユリがいても悲しいし
プリンス先輩を見たら、もっと悲しくなるかもしれない。


薄暗い廊下を、私はそっと引き返した。