黒ユリのタンゴ

月曜、朝のホームルーム後。

さっそく智香がやってきた。

「さ、早速教えていただこうかな」

ひとしきり金曜日のやり取りを伝える。

ただ、あまり褒めちぎると智香の顔色が変わる可能性があるので、あくまで客観的にボスのすばらしさを伝えることのみ。

途中何度も「さすが山崎先輩・・・」とつぶやく智香。


先輩の作った書類をくれ、という願いだけは、さすがに断った。


そして流れからファンについての話へ。


「男のファン、ねえ・・・」

智香もチョッピリ驚いている。


「いままであんまり聞いた事ないよね、男でファンって」

「でもさ、もしかしたらある意味強力なライバルになるかもしれないなあ」

智香はどうやら本気で心配しているらしい。

「神田君なら大丈夫じゃないの?まだまだ憧れに毛が生えたみたいな感じだし」


「いやいや、そこから発展していくかもしれない」

「そうよ、もしかしたら大変なことに・・・」


どんだけ心配しているんだ。

神田君の眼鏡ヅラとボス。
二人の姿を想像すると、笑えてきた。

いやいや、こんなことを伝えるために返信したんじゃない。

「それでさ。智香に協力してほしいのは、先輩からの頼まれごとよ。」

「うん、それ。気になってた。何か協力できることってある?」


(おっ、食いついてきた!!)