黒ユリのタンゴ

こんなやり取りをしながら。

学食オリジナル「ロバのくりーむぱん」を二人でパクついていると、ひょいっと横からボスが顔を覗かせた。


ボスが食堂に現われるのは、珍しい。

比較的背が高いものだからすぐにこの人は目立つ。

普段は教室で食べているはず(by智香)なのに。


「おやおや、トモちゃんに黒ユリ。おいしそうに食べてるねえ」

「あっ!山崎先輩!!」


あれは今年の体育祭。

ボス、もとい山崎センパイとちょっとした絡みがあった智香は、それ以来「ちょっとした山崎先輩ファン」を公言している。


先輩の所属する文芸部に掛け持ちで入ろうと思ってる、と本気で言い出したときはさすがの私もびっくりしたものだ。


慕われている先輩もやっぱり悪い気はしないのだろう、よくこうやって二人をいじってくれている。


智香も先輩の前では、ちょっとした「いい子ちゃん」だ。