黒ユリのタンゴ

「ふ〜ん。それで寝不足になって、さっきの時間居眠りしちゃったわけだ」


いつもの学食。いつもの定位置。


そう。
最近ハマッた例の本と百人一首のおかげで私はすっかり寝不足。

おかげでついさっき、居眠りして先生に怒られちゃったのだ。


比較的穏やかなおじいちゃん先生だったからよかったものの、数学のハム助だったら、大変なところだった。


「で?実際覚えられてるの?」

「それがねえ・・・」



理解したからといって、簡単に憶えられるわけではない。
似ている内容の歌が多いのもややこしい。
元々自信のない記憶力が、さらにアヤシク思えてくる。


どう見てもあの中で浮いている蝉丸の歌はすぐに憶えられたんだけど。


「なによ、セミマルって」

智香が目を丸くした。


さては智香もあまり分かってないな?