黒ユリのタンゴ

でも文句も言ってらんない!

ボスのヤサシサと、プリンス先輩の愛に応えるためにも


わたくし、
いっちょ、本気だすよっ!

今日はこれ読んで、特訓だ!


誰にも見られないよう、すばやく例の本を鞄にしまうと気合い十分に教室を飛び出す。

駐輪場へ向かう途中、隣のクラスの友達がカラオケに誘ってくれたが、今日の私は一味違う。

「ごめん!今日はどうしても無理なの!」


流石にこれから百人一首覚えるの、とは言えない。

それって、かなり危ないヤツ。

カラオケも魅力的だったけど、涙を呑んで駐輪場を後にした。


学校の目の前は一直線の坂道。


今日は一人だし、ちょっと飛ばして帰ろう。


「変な期待とやる気」を胸に、私は一生懸命ペダルをこいでいた。