黒ユリのタンゴ

「こないだの子、どうだったのよ」


智香が思い出したように聞いてきた。


つい先日も。

休み時間に智香と歩いてたら、同じ中学だった男の子に呼び出された。


何かと思っていくと、案の定白ユリ絡み。

「いや、白川さんって、彼氏とかいるのかなあ。」


はあ。

私、白川さんじゃないし。


とにかくそんなに仲良くないんで知らない、と答えると

今度はお手紙を渡してほしいという。



・・・わたし、黒ヤギさんではないんですけど。

むしろ食べちゃうぞ。


結局知らん振りってわけにはいかないから、白ユリに渡してあげた。


あの子もあの子で、特にお礼もお詫びもなく、受け取るだけ。

その態度はどうよと智香にひとしきり愚痴る。