夏の事。

トラクタは急に起きたブレーキに

ギュギュギュ!!と音を出しながら止まった。


……もう少しで土手に乗り上げる所だった……。


タケルはハンドルを持ったまま呆然としていた。


自分の名前に気付かなければ、トラクタは土手1メートル程ある土手の途中で横転してたかもしれない。


ブル……ッ。


想像して、思わず震えが起こる。



バタンッ!!



急にトラクタのドアが開く。

タケルはハッとした。


あかりの祖父がトラクタに乗り込む勢いで

「お前大丈夫かっ!?」

と、問い掛けた。

遠くにはタケルが乗ってるトラクタとは違うトラクタが見える。

真っ青な顔のタケルを見、そこから足まで、祖父は観察する。

怪我がない事を確認し、ホッとした様子を見せ、

「いや、長芋の畑から帰ってきた所でな。
見たら様子がおかしかったから慌てて走ってきたんだ。」


祖父の長靴には少し前まで雨が降って、地盤が緩んでいた関係で、泥がくるぶし辺りまで付いていた。

小麦畑の横にある大きな水溜まりを気にせず走ってきたのだろう。

作業服の足の部分にはてんてんと泥が付いていた。