夏の事。


ガー……。
小麦畑に農薬を散布していたタケルは、トラクタに乗りながら、ボーっと先程あった事を反芻する。

『そんな言い訳なんか聞きたくないよっ!!』

恐らく、あっちで付き合っていた恋人と電話番号していたのだろう。

…いや。
『気持ち悪い』とか、『もう電話して来ないで!!』と叫んでいた時点で、もう別れてしまったのかもしれない。

しかし。

『子ども』

タケルには、あかりのその事実が心に深く突き刺さっていた。

(だからあいつ、あんな俯いた顔してたんか……)


『辛気くせぇ顔しやがって!!』

知らなかったと言え、何故そんな事を言ってしまったのだろう。
そう言った自分に悔やんでもしきれない。


(揉めたあげくに墜ろしたのか?)


あれから1ヶ月経ち、ようやく、辛気臭い顔から、笑顔が戻ったというのに。



そんな風に思っていた時に

『タケルッ』

外からそんな声から聞こえた。

タケルはハッと前を見ると、畑の土手が目の前にあった。


(……!!!)


「っぶね!!!」


タケルは慌ててブレーキを踏んだ。