夏の事。


あかりの部屋の前

タケルはあかりのドアをノックしようとした。

その瞬間。

『そんな言い訳なんか聞きたくないよっ!!
あんだけ散々、「結婚したいから」って言って、付けてって言っても中出ししてっ!!
赤ちゃんの写真に「気持ち悪い」とか言ってたくせに!!
それをいまさらなんなのっ!?』

ピタリ。
タケルはノックする手を止めた。

(中出し…?子ども…?あいつ何言ってんだ?)



『……ねーアヤト。

あんたさ、私がどれだけ悩んでた分かってんのっ?!
どれだけ助けてって思って。
アヤトの事頼ってたのに結局それでしょっ?!
なんなの?!
お金の事ならお母さんに言ってよッ!!』

(…お金?)

『いやそれはなんて言う言い訳聞きたくない!
あんたとなんか話したくない!!
もう私になんか電話して来ないでっ!!』


バチンッ!!

電話を閉じたであろう音が聞こえる。


そして

『ふっ……グスッグスッ』

鳴り響くあかりの泣き声。


『………う〜〜〜……ッ』

感情を噛み殺す泣き声に

タケルはただ呆然とした。


(…あいつ…何があったんだ…?)


そう思いながら、タケルはただあかりの部屋の前を立ち尽くしていた。