翌日。

タケルは後悔をしていた。

売り言葉に買い言葉とは言い

この村に来たばかりのあかりに

「俺んち来いや!!」

などと言った事に対し。

(な、なんかナンパになっちまってねーか?)

と、ひたすら自分が言った事に恥ずかしさを覚える。

あの時あかりは

「はっ?なんでそんな朝早くに起きなきゃなんないのよっ」

なんて言っていたから、来てくれるなんて保証はない。

何故かあかりの祖母には

「良いことかもしれないねぇ…
タケル、あかりの事頼むわ」

とタケルに声を掛け

あかりは

「はっ?ばあちゃん、こいつ何考えてるかわかんないから行きたくないんだけど!!」


なんて言っていたけど。


朝午前3時55分。


まだ薄暗く少し肌寒い朝の牛舎。


冷たい水でシャキっと起き、ロングTシャツとジーンズの上から作業服を着たタケルはパチンッと電気のスイッチを点ける。


そうすると、「モォォー」と、今まで寝そべっていた牛達が起き上がり

細い尾を横にパチンパチンと尻にたたき付け、

「ほら、早く仕事に取り掛かりなさい」

と促した。


(あいつ、来るかなぁ…)

と、半ば諦めの心境で、タケルは牛達の搾乳の準備を始めた。