6月。

この大きな大平原にも春が来て、空を見上げると大きな入道雲がもくもくと2、3浮いている。


その下には舗装されて幾許か経った、ひび割れたアスファルト。

右には木々が並び、左には果てなんか無いのではないかと思う位の、白・黄・緑のコントラスト。

サーッ。


大沢タケルは大急ぎでアスファルトを自転車で走っていた。


「やべぇ〜遅れちまう!!」


学校の放課後は近隣に住む「田中家」の畑の手伝いをし


朝は自分の家の牛舎の世話をする。


「俺、家継ぐわ!!」


畜産業を営む父に、高校1年生の頃、そう告げた途端、タケルの舞い降りた日課はこれだった。

農業高校に通うタケルは、冬以外の当番の無い日の放課後はこうやって、毎日の様に急いで自転車を走らせていた。


(それにしたって、結構忙しいよな、コレ)


我ながら苦笑いをしながらタケルは


2、3あった登り道・下り道を経て


「田中農場」と書かれた家の土地へ入る。