「…で?なんでリア充のタケルちゃんは、万年彼女ナシの俺に相談するかな?」

そう、タケルに反撃したのはヒサシだ。

タケルとヒサシは、8月に入ったトラクタ倉庫で、ベルトコンベアを使い、作物の整理をしていた。

ミーンミンミンミン


遠くで、セミの声が聞こえる。

真夏に入った村は最近30°台をずっとマークしている。


タオルを頭に巻いたタケルは


「だーってよー。
ヒサシだったらわかるだろ?
この村で一番の「チャラ男」って言われてたんだから」


「…チャラ男なんざぁ、聞き捨てならねぇな。

来る者拒まずなだけだ。」


「…チャラ男っつぅよりヤリチンか……?」


「っるせー!!男と女の利害関係だべや!!
しかも、それ言われたの何年も前も話だ!!」


「ぷっ」


タケルは吹き出す。


ヒサシが突然おとなしくなった理由をタケルは知っていたからだった。


「…で?この村一番のチャラ男だと言われた男に、お前は「デートすんならどこが良いか」なんぞ聞くわけだ。」

そうなのだ。

あれから2週間が経ち、毎日は会ってるものの、デートすらしたことが無いタケル。

シンに相談しても、

「初々しいなぁ〜」

とからかう目で言い、何も回答が得られなかった。


(あいつはどこに行きたいんだろ…)

そう考えても、どこが良いのか検討もつかない。


「頼む!!教えてくれ!!」


お礼ならなんでもする!!とタケルは答える。


「普通に町行きゃ良いだろー?
買い物するとか、映画見に行くとか。」

「や、でもさ、町でどこが良いかとか、映画だったら何が良いかなんて、俺知らんし!!」


そこでヒサシはニヤッと笑う。


「…教えたって構わねーが、俺が紹介する場所は「黒い」事は忘れるな?」


「…ハッ!?」


「この村一番の「チャラ男」が行く所なんだから、それくらいわからんとな」


ヒサシはククク…と笑う。


「んで、おめぇらの告白現場を覗き見したくれぇなんだから、ひとみとかは喜んで偵察すっと思うぞ?」


なんだか、物陰に隠れて尾行するユウキ含めた4人の姿が頭に浮かぶようだった。