夏の事。

「こんな事引き合いに出しちゃいけないんだろうけどさ。

私があんな事しなければ、お父さんとお母さんを説得して、ずっと一緒にいれば、きっと今の私のお腹は凄く大きくなっていて。

きっと、毎日お腹の中で動いてる事にすごく幸せを感じていたんだと思う。」


「…………」


「きっと、出産の準備なんかしていて、毛糸の靴下なんか作ってたんだろうなぁ。

とか。

この手で抱きたかったなぁ…とか。

そんな事、私思ってるの。」


タケルは黙ってあかりの話を聞いていた。


「飛び降りて、1ヶ月経った後、また生理が来はじめたの。

ずっと「来なかったらどうしよう」って思いもあったけど。

生理が来た時、あんなに動いてたのにって。

辛かった時あんなに「守ってあげるよ」って感じてた筈なのに、私は軽はずみな行動取っちゃったんだろう…って。

初めてお腹が動いた時、あんなに一人じゃないって…思っ…たのに…」


最後は涙声になり、
あかりは静かに涙を流す。


その瞬間

ふわり…と、背中に温もりを感じる。


「え…?」

タケルがあかりの肩に手を回している。

突然、抱きしめられたあかりは何が何だか分からなくなり

「どうしたの?」

と言った。