夏の事。

<あかり視点>


早朝。

昨日産まれたばかりの仔牛は、初乳が終わったあと、仔牛専用の寝床へ行った。

あかりは昨日の経験が何か夢であったかのように見え

産まれた時の瞬間や、仔牛がふらふらと立ち上がる様が忘れられず

興奮して眠れなかった。


「あかり。仔牛に乳をやってくれないか?」

そうタケルに頼まれたのは搾乳が出来る牛達の搾乳が終わったあと。


タケルはデラの乳を1リットルのベットボトルの様な容器に半分入れ、それを水で薄めたものをあかりに手渡した。


「これ。」

「なんで薄めちゃうの?」

「初乳は母親から免疫貰うためにそのままあげるけど、仔牛にとっては濃いからな」


「そっか。」


手渡された乳の入った容器に


「あそこにある乳首付けてくれ」


と言われ、あかりは乳の入った容器に、ゴム製でオレンジ色の乳首を付けた。



あかりは仔牛のいる柵に近付いた。


座り込んでいた仔牛がすくっと立ち上がり、突然来た人間にビクビク警戒する。


「牛は臆病だから、初めて見た物に対しては怯えちゃうんだ。」


そう言い、仔牛のいる柵に入ってく。


仔牛は突然入って来たタケルにサッと逃げようとするが、


「ハイハイ、ご飯の時間だからね」

と、タケルは声をかけ、牛を足と手で押さえた。


じっと柵の前でそれをみていたあかりに


「ほら、あかりも中に入って。」


と声を掛けた。


「う、うん」


あかりは柵を乗り越える。


仔牛はまた入って来た知らない物にビクッとし、逃げようとしたが、タケルが抑えていたのだろう。

全く動かない。


「ほら、それじゃあ口元にオレンジ色の乳首近づけて。」


「分かった」


「ペットボトルば上向きにしたら、飲んでくれるからな。」


「う、うん。」


そう言い、あかりは仔牛の口元に乳首を近づけ、ベットボトルを上向きにしようとする。