夏の事。

仔牛は母牛であるデラにしばらく、胴体を舐められながらも


フラフラ…と立ち上がろうとしては、倒れ…と必死に立ち上がり、デラの乳の元へ行こうとする。


タケルはこの光景にいつも感動する。

この世に生を受け、まだ間もないのに、必死に新しい世界に挑もうとするかのように見えるからだ。


(頑張れっ頑張れっ!!)


横にいたあかりを見遣ると、あかりも固唾を飲みながら、ギュ…とこぶしを握っている。


タケルは、同じ気持ちでいるのが嬉しかった。


こうして、フラフラ…とまだあまり見えないにも関わらず、デラの乳房にたどり着き、懸命に初乳を吸い出した仔牛を見て、

その場にいたあかりは

「わぁっ!!」


と思わず拍手しそうになる。

タケルは
「シッ。」

と、あかりを制し、


「突然大きな声出すと、驚いちゃうから」


と言った。



何度もお産を見ているひとみとシンは


「ちょっとぉ〜?やっぱりタケルちゃん、男の子だったのね〜?シンくん」

「うっうっ、あの牛と作物にしか興味のないタケルが女の子に興味を持っなんて……!!」


と、小声でやり取りをし始めた。


その小声を察知したタケルは、わなわなとこぶしを握り、


「おまっ!!」

と言った所で


「コラ、タケル!!お前さっき大声出すなってあかりちゃんに言った所だろっ!!」


と父に注意を受けた。


「……」

タケルはこぶしを握り締めたまま


(くっそ〜あいつら後で覚えてろよ〜!!)


と思う。


小声が聞こえて来なかったあかりは

その光景を見て

「やだ〜タケルってば」


と、クスクス笑いはじめた。


タケルは


カー


耳まで熱くなった。