「…あれ?
おっかしいな~?
さっきこっちに曲がったはずなのに!」

下から男の人の声がする。

(だから!
なんで貴方はそこまでしつこく私を追い回すのよ!)

声を大にしてそう叫びたかったけどなんとか我慢出来た。
総ては今後の私のため!
でも短距離型の私にはもうほとんど力は残ってなかった。
見付からないためにもう少しだけ上に、と思ったのが悪かったのかもしれない。
木葉がガサっと鳴って気付いた男の人が近づいてくる。
慌てた私はどうにか逃げようと立ち上がった瞬間足を滑らせた。

「!?
きゃーっ!」

「えっ?
うわぁっ!?」

男の人のちょうど真ん前に落下した私。
男の人の方は咄嗟に手を伸ばして受け止めようとしてバランスを崩す。
結果、男の人が私に覆いかぶさるようにして倒れた。

頭は男の人の手がクッションになって無事だったものの節々痛い。
更に言うなら現状が有り得ないくらい痛い。

「ってか、え?
幽霊なのに触れる…?
しかも、きゃーって…?」

(最悪だ~。)

「…綺麗。」

「…は?」

「その瞳!スッゴく綺麗!!」

「!!」

倒れ衝撃で顔がもろに出ているのにも気づかないくらいこの時の私は動揺していた。

(しかも見られたくない瞳までしっかり見られた!)

慌て前髪を下ろして顔を隠そうとする手を押さえ付けられて動けなくなる。

「どうして隠すの!?
オーロラが凝縮されてるみたい…。
こんなに綺麗な瞳見たことない。
素敵なものを持っているのに勿体ないよ!」

オーロラか…。
確かに今の私の瞳はそんな色をしているだろう。

私の瞳は右が焦げ茶、左はその時の感情によって色を変える。
今、不安・恐怖・憎悪などを感じているから青・紫・黒などが混じり合っているはずだ。

「…いい加減放して。
この状態で騒がれたいの?
端から観れば貴方が無理矢理、私を押し倒したように見えると思うよ?
私もそんな設定にするし。
しばらくは出て歩けないんじゃない?
もしかしたら、街から出て行かなきゃかもね。」

自分でも驚くくらい冷たく重い声が出た。
瞳の色はおそらく銀・水色・黒がユラユラといった感じ。