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「だって、菊が安売りしてたんだもの」
小矢部夕貴が、買ってきた缶ジュースを病室の小机に並べながら、無表情に言った。
「…見舞いに菊って、ギャグだろ」
俺はおそるおそるツッコミを入れた。
信也は、親父とおふくろが来るまでに、片付ける仕事があると言って、夕貴が来るとさっさと事務所へ戻って行った。
夕貴は椅子に腰掛け、缶ジュースを開けながら感情のこもらない声で言った。
「菊にはね、不老長寿や無病息災の意味もあるの。要するにとらえ方の問題。そもそも私、実用的じゃないものにお金をかけたくないの」
「……なんで買ってきたんだ」
「薫への感謝の気持ちよ」
俺は首をかしげ、缶ジュースを飲んでいる夕貴を見た。
