「ホントにあの時は、当たり前の事ができていなかったんだなぁって…恥ずかしいんですけど。」 仁藤は歩みを進ながら、浩二を見た。 「何言ってんだよ、ちゃんとあの後を演じきれてたろ。」 浩二の言葉に仁藤は首を横に振った。 「先輩のおかげです。それまでは、セリフを感情を込めて言えば褒めてもらえていたから…。登場人物の各々の気持ちでなんて、考えようともしませんでした。」