二月の半ばを過ぎても、頬を撫でる風はまだ、冷たい。

それでも、街はパステルカラーに彩られ、春を感じてあたたかい。


暫く、洋服も買っていない私は、流行遅れの黒いコートが恥ずかしく、いつの間にか表通りを避け、来た事もない裏道を歩いていた。



「ねぇ、僕を買ってくれない?」


ん?

自分が声をかけられたんだと解るまでに、何度も辺りを見回した。