「ごめん……忘れ…「酷いよ、記念日忘れるなんて……あたしとの記念日より、凌は仕事が大事なんだね。」


ティッシュで拭いても止まらない涙を頬にいっぱい濡らしながら、彼女は少しだけ怒り口調で言った。


「仕事も大事かもしれないけど、初めての結婚記念日なんだよ?せっかく凌の好きなオムライスでお祝いしようと思ったのに。」

「悪かったよ、ごめん。今日は仕事でミスってお偉いさんのことに謝りに行ったり、報告書も仕上げないといけなかったんだよ。」

「……うそ。」


へ???


「最近ずっと帰り遅いじゃない。たまの休みだって、家にいないし、帰ってきても、あたしとあんまり話しもしないし…。」

「仕事が本当に忙しいんだよ、決算時期だし…。休みに家にいないのは、たまの休みだから俺だってゆっくりしたいんだよ。家にいたら、真紘が泣いてゆっくり休めないじゃん。」

「……そうやって真紘のことうっとうしく思って、全部あたしに押し付けるんじゃない。あたしだって、休みなしで子育ても家事もしてるんだよ?休みの日くらい、少しくらい協力してくれてもいいじゃない。」

「は?子育てとか家事とかお前の仕事だろ?俺は外で仕事してるんだから。お前こそ、もうちょっと俺をいたわったら?一生懸命仕事して帰ってきて、お前がそうやってグチグチ文句言われたんじゃ、やってらんねぇよ。」


あまりに俺を責める希に対して、腹が立った。

俺だって頑張ってる。

いや、俺の方が頑張ってる。

ずっと家にいる希に、外で仕事してる俺の苦労なんてわかるわけない。



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