「‥ちっ!」
舌打ちをしたウォルフの頬には、未だに真っ赤な手形の跡がある。
あたしはこう見えて、意外とちょっぴり(?)怪力だ。
ふてくされたように横を向いてるウォルフにチラリと視線をやる。
赤みの抜けない頬っぺたを見てると少しだけ気の毒に感じてきた。
ジッと見つめるあたしの視線に気付かないのか、ただ単に不機嫌になってしまったのか。
ウォルフは諦めたようにあたしから離れて行った。
「ドコ行くの? 今日出発でしょ?」
「酒場」
ウォルフは振り返りもせずにそう言うと、頬をこすりこすりしながら、とっとと酒場のある方角へと歩いて行ってしまった。
「あらら」
ちょっと拒みすぎたかな。
少し反省してると、
「ねーちゃん、駆け引きも大事だが、あんま引きすぎると男ってのは逃げるぜー」
すぐ近くにあった屋台のおじさんが笑っていた。
思わず驚いた私だったけれど、笑顔を作って笑い返す。
「私たちそういうんじゃないですから」
「‥え、そうなのか」
一瞬固まったおじさんは
「そりゃ悪かったなー」と謝り、
私は「いえいえ」と返してその場から離れた。