「花恋、行こうよ」
里香に手を引かれて、あたしは岳の目の前に来る。
間近でみた岳は、やっぱり別世界の人だ。
オーラがキラキラしてる。
「あの…桐谷岳さんですよね?」
控えめな感じで里香が話しかける。
「うん、そうだよ」
岳は、ニコッと笑って愛想よく振る舞う。
道を歩く人からは、後ろ姿しか見えないから岳に気付かない。
裏庭には誰もいないから
本当に岳のプライベートの時間に居るって感じがした。
「この学校に、用事ですか?」
里香はいつもの数段も高い声だ。
「そうじゃなくて、ちょっと知り合いが居てね」


