「どれ、見せて?ちゃんと落ちた?」


近づく果夜のビー玉のような瞳に映るオレ。


長いストレートの髪が腕に触れて、ドキドキする。


さっき恭平に言われた、


「姉ちゃんの事、好きだろ?」


が、頭ん中を巡り、つい果夜の髪に手が伸びてしまった。


「どしたの?蒼斗?」


「…あ、いや。姉ちゃん、髪伸びたな?」


いつもは果夜と呼ぶのに、物理的に近過ぎる距離を意識して、姉ちゃんと口にした。


「蒼斗、長い方が好きでしょ?」


「あー…、うん。似合うんじゃね?」


「そ。ねぇ、お腹空いた!早くカレー食べようよ?蒼斗のは、お肉多め、ツユダクにしてあげるっ」


ほら、な。


近いんだよ。


果夜はオレの事なら何でも知ってる。


カレーは肉が多くてツユダクが好きって事も。


果夜の長い髪が好きって事も。


「おっ、やっとアオイちゃんから蒼斗に戻ったな?」


茶の間でもうカレーを食ってる恭平を見て、なんだか笑えた。


果夜を想う緊張感から解かれたような、そんな安心感。


いつもより福神漬けを多めにトッピングした果夜のカレーはうまかった。