「ごめんなさいね、果夜。私は、お父さんはあなたを心から愛してるわ」


「果夜、私はこれっきりもう会う事はしない。ただ、1つだけ頼みたい事がある。娘を、果夜を抱き締めてもいいかい?」


「うん…。お父さん、ありがとう…」


13年ぶりに会ったオヤジは。


愛おしそうに果夜を抱き締めると、名残惜し気に病室を出て行った。


「お母さん、本当にいいの?あたし、お母さんの娘でいられる?」


「今までも、これからも、果夜は私の娘よ」


「でもあたし…。蒼斗が好きなんだよ?何度も気持ちを消そうと思ったの。でも、できなかったの。あたし…あたし、蒼斗が好き」


「その気持ちに正直でいなさい。言ったでしょ?もうあなた達は自由よ」


「お母さん…。お母さん…!」


子供のように泣きじゃくりながら母さんを求める果夜を見て。


あぁ、やっとだ。


やっと果夜は自分の居場所を、母親を得る事ができたんだと思った。


にがく苦しく辛かった過去の呪縛から解かれた果夜の涙は。


温かい。