果夜の部屋からは、すすり泣く声が途切れる事なく続いていて。


オレと母さんは茶の間で何も言えず、果夜の心の叫びに耳をすました。


悔しい。


果夜の心を知らなかった、オレ。


守れなかった、オレ。


好きだ、愛してると言いながら、何一つできやしない。


ちっぽけな。


オレ。


「…ごめんなさいね」


「今、母さんを責めても、果夜の涙は止まらない」


「そうね…。私、どうかしてたわ」


「いらない子、果夜はそう言った」


「違うのッ!決してそうじゃない。あの人の果夜を思う気持ちもそうだけど、私なりに考えた結果でもあるの」


「父さんに引き渡す事が…?」


「私が蒼斗に先に相談した理由はね、あなたが果夜の事をどう思っているか、なんとなくわかってたからなの」


「………」


「引き離そうとしたんじゃないの。想っているなら、遠慮なく恋ができる環境を作りたかった。好きだ、ってちゃんと胸を張って言えるような。だったら籍を抜いてお父さんに果夜を任せたら、って…大人の勝手なこじつけよ、ね…」