「…はぁ」


口癖のような溜め息だけが、ウザイ程自分の耳につく。


「28回」


「は?」


「蒼斗の溜め息、今朝の登校から今まで28回だぜ?」


「んー、そ」


今日も今日とて仕事についてきた恭平に溜め息の数まで指摘されても、言葉を返す気力すらない。


恭平にできるだけ仕事に同行してくれるよう頼んだのは、オレの方なのに。


「恭平くーん、移動中の車の中でも気を抜かないでちょうだい。蒼斗はアオイよ」


「へいへい」


ガムを差し出す恭平から無言で受け取り、ミント味を噛み締めると、また溜め息が出そうになったが、「29回」とまた無駄なカウントを聞く事になるだろうと、グッとこらえた。