───ガシャン!


果夜が立ち上がったのと同時に運ばれてきたパスタが皿ごと床にひっくり返った。


「ご、ごめんなさいっ!あ、あの…あたしちょっと具合が悪くて…。ごめんなさい、今日は先に失礼するね…。蒼斗はアリエルちゃんとゆっくりしておいでね。じゃあ…」


鞄を持ち、逃げるように帰っていく果夜を追おうとしたが、その手をアリエルが止めた。


「変ね、果夜さん。初めての現場付き添いで疲れちゃったのかしら?ね?アオイ?」


「ん?あ、あぁ…」


「さ、メニューも運ばれてきたし、ダメになっちゃったお料理はちょうど果夜さんの分だったからお食事始めましょ?」


果夜…。


急に具合悪いって、1人で帰れんのかよ…。


こんな夜遅くに女子高生1人で街ウロつかれたら、ヤベーじゃん。


「悪りぃ、アリエル。オレも帰る」


「どうして?」


「果夜、ほっとけねぇし」


「あら。やっと2人きりになれたんじゃなくて?ねぇってば、アオイ」


「帰る」


「ダメよ。わたくし、あなたを帰さない。アオイはわたくしのモノ。欲しい物は絶対手に入れるわ」


「お前さ、オレがメンバーになって気にいらねーんじゃなかったのかよ?」


「最初はね。女装男がメンバーだなんて、あり得ないと思ったわ。でも今は違う。わたくしはアオイが欲しい。どんな手を使っても」


「あのな…!」


───!?