「…あ。───つっ…!」


「…?どした?果夜?」


シンクにベチャッと落ちる豆腐の音。


果夜はすぐに水道をひねって手を洗い流す。


「どした?果夜?」


「手…切っちゃった…」


駆け寄り果夜の手を見ると、左手の人差し指から血がしたたっていた。


「どら、貸せよ」


果夜の手を取り、思わずその指を口にくわえた。


「あ…蒼斗…」


果夜が崩れるようにその場にしゃがみこむ。


そして。


いつからか見なくなっていた涙を頬につたわせた。


「痛むか?病院行くか?」


果夜はただ首を横に振り、泣き続ける。


すすり泣く声と蛇口から水の流れる音を同時に聞きながら、オレは出血が止まるまで果夜の指をくわえていた。