さりげなく、人混みから私を避けてくれている事にも気づいた時には、完全に黒斗くんの優しさにヤラれてた。



どうしてこんなにも黒斗くんは私を惑わすんだろう。


冷たいかと思えばとても優しい彼の魅力に翻弄されてしまう。






「…――そういえば、」



駅のホームに伸びた列に並んだ時だった。

そうぼそりと呟いた見上げた先にある黒斗くんの視線は、こちらに向けられる事なく真っ直ぐただ前を見ていた。



「うん?」


「……髪、切ったのか?」


「えっ!あ、うん……変かな?」


「あー…いや、別に」



そういう意味で言ったんじゃない、と言って、やっとこちらに視線を向けた黒斗くんの、真っ直ぐな黒目がちの綺麗な瞳に思わずドキッとした。