世界が終わる前に



そして、この一ヶ月間、待ち焦がれた彼の元へ、いよいよ私は形振り構わず人集(だか)りを掻き分けると、一気に駆け出した。


最早お兄ちゃんの“言い付け”なんて、頭の片隅にもなかったのは言うまでもない。



久しぶりに見る彼のその姿は、相変わらずあの日と何の変わりもなくて、言いようのない安心感が私の胸を支配した。


それから彼の真ん前まで辿り着くなり、私はゆっくりと目の前にいる背の高い彼を見上げて言葉を紡いだ。



「……どうして、ここに?」



意に反して震える声。

溢れ出そうな喜びを零さないよう、至極冷静に問い掛けた。



「あ?来ちゃ悪いかよ?」



言いながら眉間に皺を作る彼の仕種は、相変わらず可愛くて、また性懲りもなく胸がドキドキしてしまった。

ときめくって、今の私の事を言うんじゃないだろうかって、頭の片隅で考えた。



「いえ、違くて……その、嬉しいんです。……また会えて」



後半は声が小さくなってしまって彼の耳まで届いたかわからないけれど、自分からそんな大胆な事を言っといて無性に恥ずかしくなってしまった私は、慌てて俯いて顔を伏せた。