二人を玄関で見送った後、やっぱりあの子達は良い子ねぇ、なんて機嫌よく言う母さんを軽く流して自室に戻って来た。
笑が受験だったこともあり、ここ数か月は中々時間が取れなかったからか今日は随分と楽しそうだったな。
洗ったばかりの茶色とクリーム色のカバーがかかったベッドに寝転がって。
模様とも言えないような凹凸の白い天井を見つめる。
「はあ……」
口から出たのは、そのまま重力に従ってズンと落ちてしまいそうな重たいため息だった。
「俺、もつかな」
いやいや、我慢しろ。今まで築き上げてきた『優しいお兄ちゃん』を壊してはいけない。
俺は笑が俺の隣で笑っていれば、それでいいんだ。
「でもなぁ……」
先程別れたばかりの、制服姿の笑が頭に浮かぶ。
やっぱりあのスカートは短すぎだ。明日の朝、笑に会ったら言わないと。
こと中身においては、それはもう一緒に育ってきた俺でさえ年齢を疑いたくなるほどガキだけれど、外見はそれなりに成長した。
変な男に手を出されないか気が気じゃない。
とりあえず、明日笑を迎えに行こう。
中学までは一緒に学校へ行くのが当たり前で、別にそうしようと言ったわけでもなく、並んで登校していた。
中学と俺が通う高校は反対方向にあるため、途切れていたけれど。少なくとも、あと二年はまた隣を笑が歩くのだろう。
誰かに譲るつもりもない。
まあ、何だかんだ、また笑と同じ学校に通えるというのは俺も嬉しい。
明日から再開される、一年振りの習慣に少なからず想いを馳せて。
読みかけの雑誌に手を伸ばした。



