「……制服、似合ってるな」


変な空気を抱えてしまった自分を誤魔化すように、けれど何でもない風を装って話を変えた。


「本当? ありがとっ」


嬉しそうに頬が緩む。

笑は名前の通り、よく笑う奴で、それも幼なじみ贔屓を無くしてもとびきり可愛い、と俺は思っている。これについては母さんの同意も得ているので、まあ、つまりそういうことだ。


紺色のハイソックスと赤いチェックのスカートの間、白い足が伸びている。

邪な気持ちではなく(全く無いとも言い切れないが)、これは寧ろ兄として気になる点である。

……これ、スカート短くないか?


「なあに?」

「……いや」


じーっとスカートを見詰めていたからか、不思議そうに首を傾げる笑に、何でもないと返す。

まあ、笑ももう高校生だし、俺が細かく言うことでもないだろう。


そう自分を納得させていると、笑がパッと顔を上げた。


「英ちゃん家今日カレーだ!」


そう言ってキラキラと目を輝かす。落ち着きのない奴だ。

一階から漂ってくる晩御飯の匂いに反応する笑に笑いが漏れる。

こういうところは子どものままだ。


「食べてくだろ?」

「うんっ」


両親が忙しいため、笑たちが家で夕飯を食べて行くのも珍しくない。

「優李も呼んでこいよ」
「はーい」

今時無いくらいの、家族ぐるみの付き合いってやつだ。