兄妹のように育ってきて、俺も妹のように可愛がって来て。なのに、どこで何が起きたのかはわからないが、気付けば微笑ましい庇護欲がドロドロとした恋情へと変わってしまっていた。


それでも、笑への態度は変わっていない、と思う。

面倒見の良い、優しいお兄ちゃん。

これが笑にとっての俺であり、これからの俺だ。ドロドロと固まってしまいそうな想いを捨てようとしたことはあるが、関係性を変えようとしたことはない。


満足しているかと聞かれたらそうだと言い切ることはできないだろうし、大きな声では言えないような想いも抱えているが、とにかく、今すぐどうこうしようとは思っていないのだ。

笑が笑っていれば嬉しいし、泣いていれば慰める。


そうやって笑顔一つにごちゃごちゃとした想いを巡らせているとは全く考えていないだろう笑が大きく伸びをした。


「はあ……、何だか英ちゃんに会ったらホッとした」


そう言いながらベッドに倒れ込む。

ぼふん、という効果音と共にスカートが跳ねた。

いやまあ、いつものことだから別にいいけど。ああ、でもそのピカピカのブレザーに皺が寄るのは良くない。

大きめの新しいブレザー。


「ああ、今日は入学式だったな」

「うん! また英ちゃんと一緒に通えるよ」


ブレザーの注意を飛ばして、そういえばと話題をふった。

ふにゃりと顔を崩す笑に、一瞬たじろぐ。

これは慣れてるとか慣れてないとか関係ない。可愛いものは可愛いし、心臓は俺の意志なんて考慮してくれないのだから。


また同じ学校に通える、と無邪気に笑うこいつを愛しく思わないのなら、きっとこれは恋なんてものではないのだ。