「…っ渡辺のくせに渡辺のくせに渡辺のくせに…っ!」
「ハイハイそういう怨み事は心の中で言ってクダサイね、と。」
スタスタ前を歩く渡辺に渋々ついて行きながらひなは後ろから小さい声で呪いをかけ続ける。
この余裕綽々の男に、いつかぎゃふんと言わしてみたい。
ここで待ってて、と、言われるがままホールのカラフルな椅子にひなは座った。
見渡すと日曜日と言うのもあって結構混雑していて。
親子連れも目立つ。
最後に来たのはいつだっけなぁ。
そういえば夏の始めに渡辺と来たこともあったなとひなは天井を見上げる。
あの時はまさか騙されてホラー映画見る羽目になるとは思わなかった。
あの時の恐怖を思い出してひなは身震いする。
やっぱり最悪だ。
鬼畜、渡辺透哉め。
しばらくしてカウンターから戻って来た渡辺にひなは呼びかけた。
「渡辺ーー。」
「ん?」
「とりあえずさ、ぎゃふんって言ってみて。」
「…ひなって時々びっくりするぐらい馬鹿だよね。はい、チケット。」
「なんだと?!………。」
目の前に突き出されたチケットに、怒るタイミングを逃しながら、ひなはその紙切れに手を伸ばした。
…そういえば。
何見るんだっけとチケットに印刷された文字を目で追う。


