「…そんなことしか言えないのかあんたは!鬼畜!心の底からの鬼畜めっ!…って、え?!」
渡辺は半泣きでキレているひなの手を急にぐいっと引っ張り、大きな柱の影に隠れるように移動した。
「な…に。」
触れられている手首部分が、やけに熱い。
するりと親指で微かに撫でられた手の甲に、石にでもなったかのようにドキドキと心臓が波打った。
いや、おかしい。
この状況、絶対おかしい。
なんでこんな所で渡辺なんかと手を握り合わなくちゃならんのだ。
人目に付かない事だけが幸いだったが、ひなは混乱に混乱を重ねた。
「…困ったな。」
「…?」
ぼそりと言葉を落とした渡辺を見上げ、ひなは聞き返す。
「…な、なに?」
「このままひなを箱詰めして家に保管したい。」
「怖い事言うな!ホラー嫌いって言ってんでしょ!」
すんごい真面目な顔の渡辺にぞわりとしながらひなは一歩後ろに下がった。
恐怖におののいているひなを一別して、渡辺はクスリと笑う。
「それぐらい、今日のひなが可愛いってコト。」
「……っ!!」
「さ。おさるさんみたいな顔してないで行くよ。」
「っが!」
な
な
…なーーーっ!
サラリと爆弾発言を投げ付けた癖に、本人は居たって涼しい顔で。
心臓が跳ねるやら。
恥ずかしいやら。
悔しいやら。
ひなは真っ赤になりながら、とにかく渡辺を思いっきり睨んでおいた。


