「…なんで来たの。」
ひなはおもむろに布団を両手で鼻の下まで擦り上げる。
…本当に、わざわざなんで来たんだろう。
約束を破った罰でも与えに来たのだろうか。
寝込んでいる所にわざわざ?
もしそうなら渡辺は正真正銘の鬼畜である。
渡辺はきょとんとしながらひなを見た。
「なんでって、彼氏が彼女の心配をするのは当たり前だろう?」
「へ、」
ひなの喉から変な音が出る。
渡辺はひなの長い黒髪を優しく撫でた。
ベッドに散らばる結ばれていない髪に、渡辺はうっとりとした顔をする。
「…癪に触るけど、やっぱり綺麗だね。」
「なななな…なにが。」
ひなは警戒心を露わにしながら顔を赤くした。
「だって、どこかの誰かさんの為に伸ばしたんだろう?」
なんでも見抜いているような怪しい瞳に、ひなは瞬く間に吸い込まれる。
…なんで、知ってるんだ。
一瞬強い光を放った後、渡辺はその透き通るような瞳を伏せた。
黒い髪の束を一房。
その、男にしては綺麗な手に収め、引き寄せて自分の顔の前に渡辺が持って行く。
「…やっぱり癪だな。」
そう呟きながらチュッと髪にキスを落とした。
「(ギャーーー!!)」


