もう、目をそらすしかなかった。
「桜。もう大丈夫なんか?」
さっきとは違う星夜の真剣な顔。

‘ドキン・・・ドキン・・・’

変な感覚。
時々星夜は思いもよらないタイミングで、真剣な顔をする。
胸が締め付けられる。
どうすればいいか分からない。
「へっ・・・平気やから・・・っ!」
星夜の手を振りはらって、教室へと走る。
うちの学校は、1年棟・2年棟・3年棟・本舎・特別棟・体育館が別々になっている。
本舎を通らなければ、学年等へ行けない。
本舎を通っている間が、長く感じる。
息が切れるくらい走った。
何かを消したいかのように。
 
‘ドンッ!’

「あっぶねぇやろっ!」
あぁ。
今日はとことんついてない。
ズキズキと痛む頭を抱える。
「あれ?お前・・・。」
知ってる人??
「誰?」
問いかけてみた。
目の前にいる男は、黒と金の混じった、長い髪に、沢山のピアスの付いた耳で、制服は第2ボタンまで、開いている。
ネクタイもゆるゆるで、役目を果たしていない。
ブレザーも着てなくて、セーターのみ。
もう、おかしくなるほどチャラチャラしてる。
この時感ずいたのは、星夜の友達だってこと。
「なぁ!桜チャン??オレやオレ!!零!昨日メールした華岸零や!!偶然やなぁ。まだ本舎なんになぁ♪」
やっぱり・・・。
星夜と仲いいのなんてこんなんばっかだ。
めんどくさい。
「零君??悪いんやけど、急いどるから、また後でな??」
早いうちにここから離れないと。
こんなとこで道草喰ってたら、星夜が来てしまう。
うちは、重たいスクールバックを肩に掛けなおし、その場を去ろうとする。
「待ちぃ。桜チャン!!」
「何ぃ!??」
だんだんイライラしてきて、うちは零君を睨みつけた。