「テメッ!」

‘バッキ!’

流音君がやり返す。
やめて。
でも、この興奮しきっている二人を止める力なんて、うちにあるわけも無く、ただ見つめることしか出来なかった。

‘バキッ!メキッ!’

酷い音が響く。
どんどん増していく、殴るスピードに、胸がざわめく。
やめて・・・・やめ・・・。
「もうやめて!!」
時が止まる瞬間を感じた。
それと同時に星華は床にへたれこみ、部屋の中には、‘キーン’というのみが残った。
「やめて・・・。やめとってよ・・。もう・・。誰も悪くないんや・・・。」

‘ガチャ’

流音君は出て行ってしまった。
「せい・・・。」
「ごめん。」
またもやうちの言葉は呆気なく星夜に遮られた。
星夜は膝に手を当て、深く頭を下げている。
「こんなに・・・。殴るつもりはなかったんや・・・。」

‘パンッ!’

ストレートな高い音。
星夜は顔を上げ、右の頬に手を乗せる。
「なっ・・・!」
「馬鹿星夜!うっ・・・、なんもあらんで良かったぁ・・・・。」
いつの間にか、星華は星夜の前にいて、星夜の右頬を殴り、怒鳴りつけていた。
でも、星華は本当に星夜を気に掛けていた。
その優しさに気付いたのか、星夜はにっこりと微笑む。
「ごめんなぁ・・。でも、もう俺らは、幼馴染やない・・・。だから丸く治めるしかないんや・・・。」
「うん。」