何がどうなっているのか分からない。
うちの目の前にあるのは、ダイニングテーブルの椅子に腰をかける、星華と流音君の姿。
二人は、向き合って座っていて、俯きかけた星華を覗き込む様に、深く俯く流音君。
向こうはこっちに、気付いていない。

‘ガチャ’

星夜がドアにぶつかった。
いや、険悪な表情で、ドアに寄りかかる。
深い沈黙を打ち切るように、部屋に響く音。
それと同時に三人の、視線は星夜へと、吸い込まれる。
腕を組み、右足を左足に掛け、流音君を睨みつける星夜。
「せい・・・・」
「おい。流音。ちょっと来いや。」
うちの言葉を遮り、右手の指先をヒラヒラとさせる。
星夜は、流音君を呼び出した。

‘ガッ・・・タン・・・’

「おう。」
椅子を立ち、星夜のもとへ、歩き出す流音君。
電気も点いていない、薄暗い部屋に、男二人の険悪な低い声と、星華の甲高い鳴咽だけが響く。
「ねっ・・・・・星夜・・や・・・っ」

‘バッ!’

いきなりうちの体の前に一本の腕が伸びた。
「ごめん。限界。」

‘バキッ!’

それだけを残し、星夜は空いているもう片方の手で、目の前にいる、流音君を殴った。
鈍い音を立てた、その振動と響きが、酷く耳に痛む。