「おい・・・・・っ!?」
焦る星夜。
「大丈夫だよ。親に遅くなるってメールするから、待って?一緒に星華のとこ行こ?」
子供をあやす様な、口調でうちが喋ったもんだから、星夜はキョトンとしていた。
そんな星夜を無視して、もう一度ケータイに視線を落とす。
メニューボタンから、電話帳を開く。思えば、親戚のメアドしか入ってなかった電話帳も、星夜のおかげで、友達のメアドが、いっぱいになっていた。
それどころか、もう見たくもないし、連絡もしたくない、親戚のアドレスは全て、削除した。
女の子や男の子の名前の中から、‘おばぁちゃん’の文字を探る。
‘♪ピロリン♪’という音と同時にメールを送る。
送信 11・5・5 7:32 『今日は遅くなるから、先寝てて?』
‘♪ピロリロリン♪’以外と早い返信。
受信 11・5・5 7:34 『分かったよ。』
よし。これでちゃんと星華と話が出来る。
「大丈夫か?」
「うん。リビングに行ってみよう?」
うちは、ケータイをポケットに入れ、立ち上がろうとした。

‘ガッ!’

「いっ・・・た・・・・・。」
凄い勢いで、星夜がうちの腕を掴む。
「痛いよ・・・・。」
聞いてない。
どんどん強くなる力。
振り払うことが出来ない。
「だ・・・・。めだ・・・・。」
「えっ?」
よく聞こえない。
「ねぇ・・・・。」
「リビングはダメだ。」
「ふぇ?」
いきなり言葉を遮られて、変な声が出てしまった。
えっ?
でも、リビングはダメって?
リビングには何かあるの?
今はそんなことより星華だよ。
「ねぇ・・・。今は星華の方が・・。」
星夜の手が離れた。
星夜の手の跡が、うちの腕に薄く赤く残る。
やっと指先に血が流れるのを感じる。
「リビングに星華はいない。」
それだけ言って、星夜はドアに体を向ける。
「ダイニングだ・・・。行こう。」
星夜はうちに背を向けたまま話始めた。
「う・・・うん・・?」