「いきなりじゃなきゃ、
ちゃんと力抜けるんだけどなー」
言葉の通りに、
腕はしっかりと回されているけれど
それは決して不快なものではない。
まあ、いつも嫌では無いのだけれど。
「だったら、いきなり
抱き着かなきゃいいじゃないですか」
「無理」
笑いながら、即答で返ってきた。
「なんかさ、急にやりたくなるんだよ。
……本当はいつも捕まえてたいし」
「だったらしょうがないですね」
後半を実行されないだけマシだろう。
「あのさあ?」
「なんですか?」
少しだけ腕の力を強めて、続ける。
「ほんとに、嫌じゃない?
こうやってるのとか、抱き着くの」
「嫌じゃないですよ」
本当に、嫌ではない。
ちょっと痛いのが辛いだけだ。
「じゃあもしもこうやってるのも
我慢できなく、加減できなくなって、
それで壊しちゃう位なったら、
どうする?」
見上げてみると、苦しそうな顔が見えた。
「ぶっちゃけ嫌ですけど」
そう答えると、傷ついたような顔をする。
でも俺の答えには、続きがある。
それをちゃんと聞いてから、
どんな表情をするのかが見たい。



