40代ぐらいの女性が、こちらに向かって歩いてくる。
え…まさかー…
「…お母さん」
やっぱり、お母さん!?
おい、ヤバいだろ!
この2ショットは、明らかにおかしい!
それに、この怪我!
どう説明したらー…
あたふたしていても、少女の母親は近づいてくる。
こういうときこそ、営業だ!
「は…はじめまして」
ニコッと営業スマイルを作り、とりあえず挨拶をしようとしたが…
「病院には来るなって言ったじゃない!」
こちらには目を向けず、少女に向かって怒鳴った。
…え?
営業スマイルが驚きで、元に戻ってしまった。
「早く帰りなさい!あんたがここにいると思うと、ぞっとするわ!!」
何なんだ、この母親はー…
子供に向かって、なんつーことを…
唖然とその様子を見ていると、母親と目が合ってしまった。
「えっと…」
営業スマイルを作ろうとしても、引きつってしまう。
「早く、この子を連れて帰って!この疫病神を!」
や…
疫病神ー…
「…大地くん、帰ろ」
唖然としていると、少女が俺の腕を掴み歩き出した。
「おい…」
そんな少女に、何て声を掛けていいのかわからなかった。
実の母親に、"疫病神"と呼ばれて傷つかないはずがないー…