「おめでとう♪」



あたしが再就職先が決まったことを報告しに実家に帰ると、母さんは“お赤飯”を用意して待ってくれていた。

「だ~か~ら~。母さん、あたし、はじめて“アノ日”が来た小学生のコじゃないんだから、お赤飯なんていらないんだって」

「めでたいときにはお赤飯って昔っから決まってんだよ。それよりはやく乾杯するよ♪」

「乾杯!」

「乾杯!」

ビールの入った母さんのコップと、オレンジジュースの入ったあたしのコップがぶつかりあって「カチン!」と澄んだ音を立てた。

そして、あたしたちはそれぞれのコップの中身を一気に飲み干した。

「ぷは~っ♪」

母さんが幸せの絶頂みたいな顔をしてる。

「母さん、そんなにお酒って美味しいの?苦いだけで全然美味しいとは思わないよ」

「苦いのが美味しいんだよ♪まさに“オトナの味”ってところだね♪」

「ふぅん…」