恋華(れんげ)

「母さんは自分が試験を受けるわけじゃないから、そんなに簡単に言えるんだよ」

「………」

「毎回毎回、心臓がどうにかなっちゃいそうな思いで就職試験を受けてるのに、向こうはあっさり“あんたはいらない”って断ってくるんだよ。これ以上、こんな思いするのは、もういやなんだよ」

「つらいのはあんただけじゃない。こんなご時世だから、あんたみたいにいくつもいくつも試験を受けている人は大勢いるはずさ」

「そうかもしれないけど、あたしには耐えられない」



「じゃあ、なんで殺したのさ?」



「殺した…?」



「自分の子どもを殺したじゃないか?」



「“殺した”んじゃない!“堕ろした”のよ!」



あたしは噛み付きそうな勢いで母さんに言った!