恋華(れんげ)

「…!」

「無愛想でくちベタで、全然契約の取れないあたしなんかのことなのに、見捨てずに、やさしくいろいろ教えてくれたんだよ……」

「女はね、好きでもない男にはやさしくしない。けど男は好きでもない女にさえ、やさしくすることができる生き物なんだよ」

「…!」

たしかにそうかもしれないと思った。

「ま、あんたを“ファザコン”にしたのはあたしのせいなのかもしれないけど……その男、あんたが何げにファザコンなの知ってて近づいたんだよ、きっと」

「そんなの分かってた……それでもいいって諦めてた……」

「それなら、そんな男のことなんかとっとと諦めて、はやく仕事を探すことだね」

「もう、いやだよ…疲れたよ……」

「探しなさい」

「いや!」

「いいかい?近所に全国チェーンのドラッグストアーができたせいで、うちの薬局は商売あがったりなんだ」

「………」

「だから、あんたにニートをさせてあげられるような金銭的余裕なんてないんだよ」